※左:サイバーコネクトツー取締役副社長 宮崎太一郎さん 右:プラチナゲームズ 福岡スタジオマネージャー 鷲阪 崇人さん
世界中のクリエイター、そしてゲームファンたちから賞賛を集める、日本を代表するゲーム会社サイバーコネクトツーとプラチナゲームズ。ゲームを制作する会社としてはライバルになりますが、宮崎さんと鷲阪さんは公私ともに仲良しで、「ライバルだけれど仲間」と言う。
「シンプルにおもしろいものをつくりたい」(鷲阪さん)、「目指すのは、週刊少年ジャンプ。夢と希望。感動を届けたい」(宮崎さん)と、ゲームにかけるものづくりへ想いがとにかく熱い二人。
「日本人が世界で勝負できるものはコンテンツを生み出す力。そこに関してはどこにも負けない。他の国の技術力が上がってきても、0から1をつくる力は圧倒的に日本が強い。日本のゲーム業界には、明るい未来しかない」と、語る宮崎さんですが、サイバーコネクトツーの代表作の一つ『.hack』シリーズと一人の少年にまつわるこんなエピソードも語ってくださいました。
『.hack』シリーズの一つであるプレイステーション2用ソフト『.hack//G.U.』は、2002年にプロジェクトがスタートした3部作のアクションRPG。
3作目の『.hack//G.U. Vol.3 歩くような速さで』発売直前に、サイバーコネクトツー代表の松山に入った1本の電話をきっかけに、ひとりの少年に出会いました。
この少年は、幼少期に小児がんで片目を失っていましたが、その後17歳の時に再発。残りもう一つの目も失わなくてはならない状況に。その少年が、視力を失う前にやりたいこととして大好きな『.hack//G.U.』の3作目をやりたがっていることを知ります。ところがソフト発売日は手術後。
そこで、発売元の株式会社バンダイナムコゲームス(現:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)とともになんとかしたいと一所懸命に奔走。制作期間を数ヶ月前倒しするという無茶もクリエイターたちと乗り越え、異例の対応で手術前にゲームを届けることができました。
それから月日が経ち、2017年に『.hack//G.U.』のHDリマスターが発売されることになった際に、少年と「これでシリーズ最後だから、思い残すことはないよ」と約束をしていたことを思い出し、大人になったその少年を探し出し会いに行きました。
その際に「.hackが近未来を描いたゲームだったからこそ、目が見えなくても今の世界を想像することができる。.hackのおかげ」と感謝の言葉をもらったとのこと。
こうしたお話からゲームが誰かの人生に与える影響の大きさがうかがえました。
人への誠実さが、そのままゲームづくりへの誠実さ、ゲームの世界観につながっているからこそ、彼らのつくるゲームは世界中の人たちを魅了するのでしょう。
サイバーコネクトツーやプラチナゲームズだけではなく、ゲーム業界全体で困っていることがあります。
それは、人材が圧倒的に足りないということ。
働きたい人は多いけれど、採用されるのはほんの数%という狭き門。
だからこそ、ゲーム業界が目指す価値のある業界であることを早くから知ってほしいと言います。
クリエイター同士でも厳しい技術競争がある中で、ものづくりにどれだけパッション(情熱)をかけられるか。人一倍もっとすごいものを作りたいと日々チャレンジできるか。が重要になる。
学生も無料でプロ同等のゲーム制作に必要なソフトが使えてしまう現代。そのため、学生の皆さんはゲームプログラマーになりたいなら、最低年間3本以上、とにかくゲームをつくる。アーティストになりたいなら、とにかく絵を描き、常に技術が革新される時代にくらいついて、誰にも負けないスキルを磨く。そして誰よりも突き抜けてほしいと語る。
優秀なクリエイターの条件というテーマには、
「あきらめの悪い人。自分の作品がこのまま世に出ていいのかを常に考えてほしい。自分の作品に対してとにかく貪欲でいてほしい」(鷲阪さん)
「自分のプライドと価値観を捨てられること。人の話に耳を傾けて、価値観を広げてほしい。また、断らない能力を身に付けてほしい」との宮崎さんの言葉に、「NOというクリエイターに仕事は頼まない。NOというかわりに、もっとよいアイデアを出して、やろうぜといえる人が優秀なクリエイター」と鷲阪さん。
こうして培ったスキルとあふれるパッションで、クリエイターたちが魂を込めてものをつくるからこそ、プレーヤーの人生に寄り添えたり、多くの賞賛を受けたり、海外で大きな反響を得たりと、人の心や記憶に残る最高の体験ができてしまうのがゲーム業界のやりがいだと言える。
ゲームというエンターテイメントには、人に勇気を与えたり、感動させたりする力があると感じられる講演でした。
「業界に入るハードルは低くはないが、一緒にパッションを持って働く仲間がほしい」と、お二人は最後にエールを送ります。
ゲームづくりへのあふれる想いで会場を熱気に包んでくださった宮崎さん、鷲阪さん、本当にありがとうございました!